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2.決意

2009.07.26  *Edit 

 ジェニーは今、ヴィスコンデール郊外にあるベアール家の館にいる。ここに来ることとなった経緯を考えると、ジェニーはゴーティス王の身勝手さに腹が立ち、自分の無力を思って、口惜しくてたまらない。
 カミーユはまだ一歳を超えたばかりで、まだまだ母親を必要としている。カミーユに王族の血が半分流れているからといって、なぜ王城に入れる必要があるのだろう? 王城にいれば完璧に世話をしてもらえると言うが、そんな幼い子が母親から引き離され、他人の間で暮らすことがどんなことなのか、王は一瞬でも想像しなかったに違いない。何もかもを意のままに操る彼の立場では、ジェニーの怒りなどちっとも理解できないだろう。
 しかし、ともかく、ジェニーは一ヶ月後に、カミーユが引き取られた場所、ゴーティス王が君臨する王城に行く。そう決意するしかなかった。カミーユには一刻も早く会いたいし、彼女を力いっぱい抱きしめたい。王に会えばあらたな怒りが燃え上がるだろうが、カミーユがこの手に帰るなら、この際、それでもいい。

 窓枠に切り取られた景色だけを見ていると、自分がこの世でたった独り、忘れ去られた存在のように感じる。けれども、いったん窓を開けて外を見渡すと、上方に果てしなく広がる空、はるか遠くにかすんで見える山並み、丘陵の向こうにある街や自分の今いる屋敷、その全てが、お互いのどこか一部と繋がりあい、ひとつの大きな世界を構成していると分かる。独りきりのように見えて、実は、世界の何もかもと自分は繋がっているのだ。
 窓を開けて、ジェニーはヴィスコンデールの街並みがあるはずの方向に目を凝らした。真夜中を過ぎた街には明かりの一つも見えず、その周囲を見渡してみても、何の変哲もない暗闇が静かに横たわるだけだ。屋敷は眠りに落ち、人々の作り出す音が止んでからしばらくの時間が経っている。ときどき、思い出したように吹く夜風に近くの木々がささめいて、目の前の世界はひそやかに息をしているのだと、ジェニーに気づかせてくれる。 
「……ジェニー?」
 部屋のすぐ外から男の小声が聞こえ、ジェニーは慌てて窓台から滑りおりた。
「誰?」ジェニーの問いに返事はなく、部屋の扉が押し開かれる。声の主が手に持っていた明かりで、室内が大きく照らされた。明るさを増した室内でジェニーと目が合うと、ユーゴ・ベアールが小さく微笑んだ。
「ベアール様」
 彼は唇に人差し指を立て、背後の廊下を気にしながら言った。「言ったよね? 私のことはユーゴと呼ぶんだよ」
 彼は微笑み、扉をそっと閉めた。
 サンジェルマンと別れるなり、口調にも態度にも気安さを見せた彼に、ジェニーは好感を持っている。兄ローリーによく似ている風貌には、あっという間に親近感を覚えた。だが、寝間着からのぞく彼の腕や首のたくましさは、ジェニーの兄とはやはり違う。
 ジェニーが視線を上げると、彼はまたきゅっと唇を持ち上げた。
「どうしたの、眠れない?」
「ええ。色々と……考えることが多くて」
 ユーゴが窓辺のジェニーにまで歩いてきて、夜風にさらされてひんやりとした彼女の額に手を触れた。それからジェニーの頭を両手で押さえ、彼女の額にぴったりと唇を押し付ける。 
「時間はたっぷりある、ジェニー」
 今日はあまり考えない方がいい、と囁いたユーゴの指の弾力は、ジェニーになぜかゴーティス王を思い起こさせた。彼と王とは、まったく似ていないというのに。
 ラニス公の城で別れてからずっと、カミーユを思うのと同じ頻度で、王のことが勝手に頭に浮かんでくる。彼に腹を立てているのに隣にいてほしくて、ジェニーの胸の奥はずっと、小さく震えて鳴き続けている。でも同時に、彼の横には王妃がいるのだと思うと、彼の姿なんか見たくない、という逆の気持ちも芽生える。
 ジェニーはユーゴの手から逃れ、窓の外に体を向けた。
「王城は、どっちにあるの?」尋ねると、彼女の横でユーゴが腕を外に突き出した。「あっちだ。街とは反対方向にある」
 向かって右手の方向には林があり、暗い影が見えるのみだ。木々が揺れ、ざわめいている。
 ジェニーが身をのりだそうとすると、その肩をユーゴの左腕が支えた。室内の光が届かない彼の瞳からは青みが消え、その横顔だけを見ると、ジェニーは兄の腕に抱かれているようだ。
 彼によく似た、兄ローリー。
 ラニス公地からベアール家に向かう道中、ジェニーは、故郷がヴィレール軍の襲撃を受けた後に、兄ローリーがベルアン・ビルの叔母宅を何度か訪ねていたと知らされた。ジェニーは耳を疑い、何度もユーゴに問い返したが、答えは同じだった。兄は、どうやってか、あの修羅場を抜け出し、たくましく生き抜いていたのだ。叔母によれば、彼は片手が不随らしいが、仲間と行商をして各地をまわっているそうだ。ユーゴがサンジェルマンと叔母を訪ねて以降、ローリーが彼女の家に立ち寄ったことは一回もないそうだが、それは疑わしい、とユーゴは言う。ヴィレールとの関わりを嫌う叔母は、実際にはあった訪問をユーゴに伏せているだけかもしれないそうだ。
「王城は昼間でもここからは見えない」
 ユーゴの声を聞いて、無性に、ジェニーは本物の兄に会いたくなった。
「……いつか、兄に会いたいわ」
 ジェニーが呟くと、ユーゴが振り返った。彼の瞳が明かりで照らされ、本来の青い光が戻る。
「いつかきっと、会えるわよね?」
 ユーゴが頷いた。
「きみが生きていると知ったら、きっと、彼の方から会いに来るさ」
 同じ空の下のどこかで、兄は無事に生きている。
 実際に会えないのはとても寂しいが、どこかで元気に生きていることさえ分かれば、ジェニーはそれで満足だ。
「うん。そうよね」
 ユーゴがジェニーの肩を抱き寄せ、彼女の頭を彼の胸に押し付ける。彼の体を感じると、ジェニーは兄が生きていることに何の疑いも持たなくなる。兄を身近に感じさせてくれるユーゴの存在が、ジェニーには嬉しかった。
 ジェニーがユーゴの背中に手をまわすと、彼の体が大きく揺れた。笑っていた。
「こんなところを見られたら、きみに手を出したって王に激怒されて、私は八つ裂きにされるな」
「あなたに嫉妬するっていうの? あの王は、そんなことしないと思う」
 ジェニーを見たユーゴの瞳が、おかしそうに笑った。
「ジェニー、王はきみを独り占めしたくて離宮に閉じ込めるんだから、それぐらいするさ。ああ、王も普通の男だと思うと、なんだか安心するな。あ、今の発言は、王にもサンジェルマン様にも内緒にしていてよ」

 王の本心は、いつまでたっても、ジェニーにはよく分からない。
 ジェニーは王の顔を宙に思い描こうとし、結局まとまらず、それは途中で消えてしまった。もう一度試してみたが、結果は同じだ。会いたいと願う人の顔ほど、それを思い浮かべようとしたとき、鮮やかに現れてくれない。
 ジェニーは王が差し伸べる腕を思い出し、ユーゴの胸に顔を預けた。
「やっと眠くなった?」
 ユーゴの低い声がジェニーの耳をくすぐる。
 王の顔はうまく思い浮かべられないのに、ジェニーは彼の手の感触をはっきりと覚えている。彼の指がジェニーの手のひらの上を滑り、彼女の指にたどりついてゆっくりとからんでいく、その動きも。ジェニーはその手が好きだ。ジェニーは彼に会い、彼女を安心させてくれるその手と繋がりたかった。王妃がいたとしても、やはり、彼の顔を見たいのだ。
 それからジェニーは兄の顔を思い起こそうとし、王のときと同様に失敗した。代わりに思い出せたのは、ゴーティス王の剣が兄の肩に振りおろされた情景だ。悪夢の瞬間だ。兄の苦痛に歪む顔、王の剣に飛んだ返り血を、ジェニーは今でも忘れていない――。そのときの心臓が縮み上がるような痛みがよみがえり、ジェニーは思わず目をつぶった。
 兄はかろうじて生き延びたけれども、王は、兄の仇であることに変わりはない。兄の不自由な片手は、おそらく、王と剣を交えたときに負った大怪我の後遺症だ。兄は、王を憎悪していることだろう。ジェニー自身がずっと、王に復讐を誓っていたように。
 兄と王の間で行きつ戻りつして、ジェニーの心は定まらない。心臓が早鐘を打ち、ジェニーは急に心もとなくなって、ユーゴの服の裾をつかんだ。
 ジェニーは怖かった。王を慕うのは、兄や家族に対する裏切りなのかもしれない。

  ◇  ◇

 ユーゴがジェニーの後に続いて馬車に乗り込もうとしたとき、サンジェルマンは、本当に同行する気か、と彼に尋ねた。当然ですよ、と笑いながら答えた彼は、「私がいれば色々と助かるはずだよ」とジェニーに囁き、完璧な笑顔をサンジェルマンに向けた。ユーゴと過ごしたこの一ヶ月を通し、この完璧で魅力的な笑顔のほとんどが、計算し尽くされた愛想笑いだとジェニーは知っている。それに、彼の言葉は、彼女への純粋な親切心から生まれたものでもない。
 それでも、ジェニーは誰かが王城まで同行してくれることが心強かった。サンジェルマンは王の命令を義務的に果たし、ジェニーを無事に送り届けはするだろうが、ジェニーの入城に決して賛成はしていない。まだ見ぬ王妃はもちろんのこと、女官長や、ジェニーとケインを国境近くで追い詰めた王の近衛隊たちも、ジェニーをすんなりと受け入れるとはとても思えない。誰にも歓迎されない場所に向かうのは、相当の勇気が必要だ。
 
 テュデル宮の佇まいは、ジェニーが記憶にとどめていた姿とほとんど変わりなかった。変わっていた点といえば、屋内を行き交う人々が増え、広間の装いが変わり、裏庭にあった垣根の高さが以前の半分にまで刈り込まれ、庭がずいぶんと明るく開けた印象になっていたぐらいだ。ジェニーが気に入っていた図書室も健在だ。
 ジェニーのために庭園を整えなおし、図書室の蔵書を増やした、とサンジェルマンが話すと、彼女の隣に付き添っていたユーゴは胸に手をあて、うやうやしく頭を下げて礼を述べた。続けて、姪はこういったご厚意には慣れていなくて、とユーゴが笑みを浮かべて周囲の使用人たちを見ると、無表情の女たちに人間らしい感情が戻った。彼は、自分の笑顔がどう効果的に働くか、よく自覚している。
 ユーゴに脇をつつかれ、ジェニーは彼に倣って礼を言ったが、ユーゴも王も、彼女がどんなことで喜ぶのか、わかっていない。ジェニーにとっては、カミーユと一緒でありさえすれば、住む場所がどこでどんな所であろうが構わないのだ。それなのに、ジェニーはテュデル宮に入ってから、彼女の気配を少しも感じられない。
 ジェニーは、居室に向かおうとした召使頭の女の言葉をさえぎった。
「カミーユはどこにいるの?」
「“カミーユ”……様でございますか?」
 女が首を傾げた隣で、サンジェルマンが会話に割って入ってきた。「ご心配なく。あとで会わせよう」
 彼は微笑みをたたえたが、その後、彼がユーゴと交わしあった視線はジェニーを不安に陥らせた。
「あとって、いつ?」
 すると、サンジェルマンはおもむろに女たちに合図をし、彼女たちを散らせた。人払いをされた室内には、ジェニー、サンジェルマンにユーゴ、テュデル宮の召使頭が残された。ジェニーの胸騒ぎが始まった。
「何かまた、私に隠し事があるのね?」
 ユーゴが渋面を作ったが、サンジェルマンは顔色ひとつ変えなかった。
「あなたに、ひとつ、お知らせしておきたいことがある」
「カミーユのことで?」
「“カロリーヌ”様だ。御子は、王族にふさわしい名に改名された。王妃様が名を考えてくださったのだ」
 そう言って、サンジェルマンは微笑む。
「名を変えた……?」
「ええ」
 ジェニーの前でユーゴが気まずそうに肩をすくめた。彼は、ジェニーの娘が改名された事実を既に前から知っていたのだ。ジェニーはそんな重大な事を教えなかった彼に腹が立ち、挨拶でもするように淡々と事実を告げるサンジェルマンに腹が立ち、何より、彼女から娘を勝手に取り上げただけでなく、名前まで変更させたゴーティス王に腹が立った。
「どうしてそんな勝手なことができるのよ! あの子の名前はカミーユよ、カミーユ以外の何でもないわ! カロリーヌなんて名前、絶対に認めない!」
「認めぬも何も、名は既に改名されている。カロリーヌ様は、庶子とはいえ王族だ。あなたがとやかく口を差し挟めることではない」
「王族の血が入ってるから何だって言うのよ! カミーユは私の娘だわ!」
「ジェニー!」横からユーゴの腕に引き寄せられ、ジェニーは彼の青ざめた顔に直面した。ジェニーが今まで彼と接した中で、彼のこんなにも切迫した様子は見たことがない。
「非礼をお許しください、サンジェルマン様。彼女は少し興奮して、そんな戯言を言っただけでして」
「でも、ユーゴ様、これは――」
「いいから黙って」ジェニーの手首をつかみ、ユーゴがむっとしたように囁いた。
 サンジェルマンは機嫌を損ねた様子もなく、二人のやり取りを目にしても、何も言わない。ジェニーが怒りの治まらないままにサンジェルマンを見ると、彼が、彼女の後ろにある椅子を指し示した。
「話はまだ終わっていない。とりあえず、座っていただこうか」
 ユーゴがジェニーの腕を引き、有無を言わさず、彼女を椅子に沈めた。

 サンジェルマンに怒鳴っても、ユーゴに怒りをぶちまけても、状況は変わらない。カミーユはジェニーのいない後宮で生活し、新しい名で呼ばれている。城の皆からとても可愛がられているそうだ。だが、ジェニーが彼女と一緒に暮らす日は来ないのだ。
 王族の子は後宮で育つ、それだけのこと。サンジェルマンの言葉が、ジェニーの胸に突き刺さってとれない。彼の説明はジェニーには少しも理解できなかった。母と娘が別々に暮らさなければならない理由を、自分にもわかるように、誰か説明してほしい。
「あなたには子を産んでくれる王妃がいるじゃない! どうして、カミーユが必要なの……!」
 王城の王に向けてそう叫ぶと、拭っても拭いきれない涙があふれてきて、ジェニーは目を閉じた。
 王の仕打ちに衝撃を受け、怒り心頭のときが過ぎると、カミーユがいないという実感がやって来た。ベアール家で過ごした一ヶ月間に感じていたものとは違う、一時的ではない喪失感が、ゆっくりとジェニーを侵食した。ジェニーが、座っている寝台から顔を上げて窓の外を見ると、青い闇が見えた。細長い窓はベアール家の窓より小さくて、ジェニーは自分が逃げ場のない世界に閉じ込められたように感じた。カミーユが側にいないと分かった今、ジェニーは孤独だった。
 
 王城には自由に出入りできず、当然ながら、後宮にも入れない。ジェニーがテュデル宮に着いてから三日目となったが、初日に来訪が予定されていた王は、いまだ来なかった。
 まだお見えにならないんだ、とジェニーの前に二日ぶりに姿を現したユーゴが驚いていた。
「……来ないでくれた方がいいわ」
 王の顔を見たら、何をするかわからない。
「まあまあ。そんなにすねないで」ユーゴが侍女たちにウインクしながら、苦笑した。既にすっかり馴染みとなった彼女たちも、ユーゴに笑い返す。
「心配しなくても、そのうちお見えになるよ。まあ、それまでは私が暇つぶしに付き合うから、ね?」
 彼はベアール家の利益を第一に考え、ジェニーの立場を利用しようとする傾向にあるが、彼女にも情を持ちつつあるようだ。
「庭園に出ないか、ジェニー。きっと、とっても綺麗に花が咲いてるはずだよ」
 ジェニーにとって、その庭園は記憶から消したい事件の場だ。ユーゴに断ろうとすると、それを察した彼に腕を引かれ、外に連れ出された。
 ジェニーの予想に反し、庭園は以前とはがらりと様変わりしていた。視界を邪魔する背の高い垣根はなく、白い優雅な花があちこちで束となり、風に揺れている。むせかえるような濃厚な薔薇の香りの代わりに、甘く爽やかな香り。
「……きれいだわ」
 ジェニーがふらふらと歩き出すと、後ろでユーゴがくすくすと笑った。「そうだね、きれいだね」
 ユーゴがジェニーに追いつき、笑いかけた。彼が自分の隣にいることには、ジェニーは違和感を覚えない。彼はジェニーの肩や腰によく手をまわすが、彼はもともとが女性の扱いに慣れている人だし、彼からは何の危険も感じなかった。
 そのときも、ユーゴは花びらをつまみあげてジェニーに見せながら、彼女の肩を抱いていた。ジェニーは笑っていた。それから、不意に周囲の音が消えたと思った次の瞬間、二人の背後から男の声が飛んだ。
「どけ、ベアール」
 二人がはっとして振り返ると、数歩離れたところに、眉間に皺を寄せ、険しい表情をしたゴーティス王が立っていた。
「王!」
 ユーゴが飛びのくと、王はじろりと彼をにらみ、そして、ジェニーに視線を据えた。彼女を責めるような目つきで、険しい表情はまったく変わらない。
「――久方ぶりに会うても、挨拶もなしか?」
 ジェニーは口を必死でつぐみ、王を見返した。顔を見た瞬間に、どんなに彼に会いたかったかを痛烈に感じたというのに、一度口を開いたら、罵倒する言葉と怒りだけがほとばしりそうだ。
 ジェニーがなおも黙っていると、王は唇を結び、ジェニーの方へ足を踏み出した。彼の険しい形相を目にすると、ジェニーの怒りが再燃し始める。彼に言い放つ文句が頭の中でぐるぐると旋回する。
 カミーユを返し、私をここから出して――。
 目の前に来た王を見上げ、ジェニーは怒りにまかせて、彼にそう言おうとした。が、王の手がジェニーの肩を後ろからつかみ、彼の胸に勢いよく引き寄せられて、ジェニーの視界は失われた。彼の匂いや胸の感触が、自然にジェニーに入りこんでくる。ジェニーの頭に押し付けられた彼の顔が小刻みに震えていて、ジェニーは怒りも忘れ、反論することもせず、その一瞬だけ、彼を受け入れた。
(こんなにも怒っているのに、彼を憎みきれない……!)
 彼の息に似た声が、遠くであえぐのを聞いた気がした。
 ジェニーがやっとのことで顎を動かすと、王の肩越しにユーゴの顔が見えた。勝ち誇ったような笑顔だ。彼はジェニーを見返すと、満足そうに眉を上げてみせた。



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