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1.出口のない森

2009.05.10  *Edit 

 今日もまた、真夏のような空の青さだ。 
 ゴーティスは執務室の窓から見える空を見上げ、四月にしては暖かすぎる空気に手を伸ばした。太陽の光は眩しかったが、その日差しはまだ、手にやわらかい。
 この頃は、朝も、早い時間から明るくなる。この一週間ほどはずっと快晴の日が続いている。つい先日までの曖昧な曇り空がようやく影をひそめ、どうやら、長く寒い冬は完全に終わったようだ。
「あの……王?」
 ゴーティスは室内にいるランス公に注意を返した。彼は外交担当の大臣だ。対応に困ったように、ゴーティスの様子をうかがっている。彼の申し出た提案にゴーティスが反応を見せないため、苦慮しているのだ。
(……この反応の鈍さで、俺からの色好い返事をあきらめればよいものを)
 ゴーティスはランス公が根負けすることを期待していたが、彼は、困惑しつつもそれを撤回しそうな気配がない。部屋の隅にはサンジェルマンと女官長もいるが、二人は、ゴーティスにもランス公にも、口を添える気がないようだ。
「……静養など、俺に必要だとも思えぬが?」
「いえ、静養と申しますか――」ランス公が、自らの過ちを訂正するかのように慌てて言った。「その、この時期は、外出されるには良い季節ではありませんか? たまには、あちらで狩りや野駆けにいそしむのも、よろしいのではないかと……。せっかくですから、この機に乗じて王妃様にヴィレールの田舎をご覧いただき、ラニス公ご一家との親睦も深めていただければと思いまして……」
 ゴーティスはまた返事をしなかった。
 臣下たちの気遣いが鬱陶しい。だが、それをむげに却下してしまうのもあとあと面倒だ、とゴーティスはとっくに分かっている。分かっていながら、返事を先延ばししたいだけだ。ゴーティスが“ラニス公地”に過敏に反応すると知りながら、サンジェルマンと女官長が沈黙を守る姿もまた、彼の苛立ちをつのらせる。
 
 亡き父親の一年の喪が明け、ラニス公として最初の春を迎えることとなったフィリップが、ゴーティスとその妃を彼の居城に招待していた。フィリップが、数年間に渡るゴーティスと彼ら一家の溝を埋めようと、ゴーティスとその新しい妻を彼らの地でもてなそうと起案したらしい。
 人の和を好む、いかにもフィリップらしい考えだ。おそらく、それはゴーティスの妻にとっても歓迎される事だろう。ゴーティスにしてみても、フィリップの誘いをわざわざ拒む気はない。
 ただ――その訪問地が、問題だ。
 ランス公が、ラニス公地にまつわるゴーティスの事情をどこまで把握しているかは、わからない。
 ケインの存在は頑なに伏せられ、ジェニーの逃亡に関する詳細は、近衛隊の間でも公言が固く禁じられている。

 ゴーティスとカローニャの第二王女カサンドラが婚儀をあげたのは、半年ほど前だ。
 一年ほど前にカローニャの第二王子が王位を継いだ折、彼らは再び、一度は同盟を断られたヴィレールに同盟を持ちかけた。良質な塩などの天然資源に恵まれた、豊かで広大な国は、ヴィレールにとって大きな魅力だった。塩は黄金の価値にも匹敵する。その上、ヴィレールを恐れるカローニャの王が提示した同盟条件は、ヴィレール側に有利なものだった。
 同盟条件の一つには、二国間が親類関係になることが含まれていた。ごく一般的な条件だ。妃候補のカローニャの王女は十三と幼かったが、ゴーティスは、彼女が黒髪と青い瞳を持つと聞いて、その同盟を最終的に承諾した。ゴーティスは、妃が美人か否かには関心を払わなかったが、妻となる女に対して譲れない、容姿上の絶対条件があった。第二王女の容姿は、彼にとって、魅力的だった。いやでも顔をつきあわせ、肌を合わせるべき女がジェニーの姿形と重なっては、毎日が耐えられない。
 かくして、ヴィレールはカローニャの王女を得て、二国は同盟を結んだ。

 妻カサンドラの顔を思い浮かべようとして、ゴーティスは、ジェニーが自分を見上げる顔をうっかり思い出してしまった。
 普段は極力、忘れようとしている女の顔。王城の屋上で、彼女が涙をこらえ、微笑もうとする顔だ。まつ毛を濡らす涙も、口惜しそうに見上げる眼差しも、抵抗しながらも上向こうとする唇の形も、あのときゴーティスが見たままのジェニーの顔が、彼の前にはっきりと現れる。
 ゴーティスは彼女の幻から目を背けるように、窓辺を見た。
 あれからもう――二年近くも経過している。
 ジェニーは、川やその近辺のどこを探しても発見されなかった。目撃者もいなかった。捜索はしばらく続けられたが、彼女の痕跡は何ひとつとして見つからなかった。彼女の着ていた服の一片さえ。
 当時の彼女は身重で、川に落下した際の衝撃にすら耐えられなかったとしても、何の不思議もない。一連の捜索の結果、ジェニーは、増水した川の濁流にのまれ、死んだものと片付けられた。ケインも同様だ。
 あのときと同じような澄みきった青空を眺めると、ジェニーが思い出される。
 ジェニーを想うと、ゴーティスがひそかに胸に隠しておいた柔らかな魂が、少しずつ削り取られていくようだ。手でむしり取られるような瞬間的な痛みとは違い、薄片がそがれ、剥ぎ落とされるまで鋭い痛みが続く。涙は出ないが、どこかで、彼の分身がすすり泣く。肉をそがれた胸の痛みと失った彼女への渇望で、ゴーティスはいても立ってもいられない。自分の弱さに面して激しい憤りと苛立ちが巻き起こり、呼吸がからめ取られていく。
 その苦痛をどこかにぶつけようと、ゴーティスは昔のように戦に逃げ道を求めようとしたが、どうしても始められなかった。戦に没頭して日々をやり過ごせば、やり切れない虚しさが増していく。自らの高揚した血は鎮められるかもしれないが、その代償に、彼の治める国は混乱する。そしてそれは、もはやゴーティスの望むところではないのだ。それに、戦を続けたとしても、それでジェニーが彼の手に帰ってくることは、ない。
 彼女が行方不明になって以降、実際の死体を目にしないことで、ゴーティスもしばらくはその生存に希望を抱いていた。引き続き捜索を行っていたサンジェルマンから、思わぬ朗報を受けられる日を待ちわびていた。けれど、その日はいつまでもたっても訪れず、数ヶ月が黙って過ぎた。そして、いつの頃からかゴーティスはあきらめ始め、ついには、その望みを捨てた。
 希望を持ち続け、待ち続けることより、彼女をあきらめたほうがらくだ。同盟の話が舞い込んだのは、ちょうどその頃だった。

「……現ラニス公も、王にお会いしたいのではないでしょうか」
 それまで無言を貫いていた女官長が、ランス公に控えめに加勢した。彼女は諸々の事情を把握しているはずだ。
「ええ、それはもう!」
 ランス公が大げさに相槌を打ち、女官長に笑う。彼女が隣のサンジェルマンに一瞥を投げたが、彼は今もなお口を結び、黙ったままでいる。
 ラニス公の名を聞くと、必然的に、その地で失ったジェニーの姿がゴーティスの脳裏に描かれる。ひとつひとつの情景があまりにもくっきりと鮮やかに、悪夢のようによみがえる。
 地面に倒れたゴーティスが顔を上げたときの、あの無念さ。
 彼女が消えた後、ゴーティスの面前に広がった、あの無情な青空。
 ジェニーを思い出したくないからこそ、あの土地との接触をずっと避けていたというのに。
 ゴーティスはまだ、ケインの腕の中から、助けを求めるかのように伸ばされた、ジェニーの腕を覚えている。彼女を失うと感じたあの恐怖は、ゴーティスから、その呼吸をいつでも奪う。崖から転落する彼女の手をつかもうとして、ライアンに背後から膝をつかまれて倒された足の痛みは、昨日のことのように覚えている。
 目の前で彼女をさらわれた衝撃。それを阻止できなかった悔恨。彼女を道連れにしたケインへの憎悪が、日に日につのる。ジェニーの体が浮いた、あの一瞬に彼女の顔に浮かんだ表情は、ゴーティスを求めていたようにも見えた。
 ゴーティスは、弟と共に自分を裏切ったジェニーを殺そうと、そこまで追い詰めたはずだ。二人を――ジェニーを、許せるはずがなかった。だが、彼女の足が地面から離れたあの瞬間、ゴーティスは、彼女が生きていてくれることを望んだ。彼女の命を狙いながら、彼女の死など願いもしていなかった己の心を知った。ゴーティスは、ジェニーを失いたくなかった。
 そんな感情があいまって、あのときから――ゴーティスの胸は大きく引き裂かれたままだ。ジェニーを失ってから季節がいくつも過ぎているのに、彼女の残像は時とともにさらに鮮明となり、ゴーティスの苦痛は増していくばかりだ。
 こういった感情は、時間が解決してくれるものではなかったのか――。
 ゴーティスは何度も時の流れに逃れようとしているのに、今のところ、どうやっても逃げおおせない。

 ゴーティスが窓から中庭を見下ろすと、中央にある木に近づくようにして、三人の女が歩く後ろ姿が見えた。真ん中にいる、すらりとした細身の若い女。豊かな黒髪を後ろで結い、その髪によく映える朱色のドレスを揺らし、両隣の女に守られるようにして歩んでいる。それが、ゴーティスの選んだ妃だ。
 静養として提案された、ラニス公訪問の真の目的は、ゴーティスにもよくわかっている。王城とは異なる環境に身を置き、いつまでも不自然なまでによそよそしい、ゴーティスと妻の仲を深めさせようという魂胆だろう。これが一般の夫婦だったらそこまで問題視されないだろうが、国同士の政略結婚で夫婦となったとあれば、その関係は国の行く末を左右する。その事情がわかるだけに鬱陶しく、最後には同意すると知りながら、ゴーティスは返事を保留しているのだ。
 ゴーティスは現実に対面するために振り返り、憔悴しきったランス公を見た。
「――よかろう。妃にもそう話しておけ」
 ランス公が喜びに顔を輝かせる反面、サンジェルマンが顔を少し沈めるのがわかった。
「は! それでは、早々に準備を整えさせます!」
 意気揚々と、彼はゴーティスの前を去っていく。女官長とサンジェルマンが顔色を窺うようにゴーティスを見たが、ゴーティスは二人ともさがらせた。
 ゴーティスが中庭を再び見ると、妻が中央付近で立ち止まり、二人の女と談笑していた。
 ゴーティスの妻は、気弱で遠慮がちな、自分の意見などひとつも主張しそうにない少女だ。容姿も性格も、何もかもがジェニーと違う。だからこそ、彼女を妃として娶ったのだ。
 ところが、彼女はジェニーとは対照的すぎて、その言動は逐一、ゴーティスにジェニーを思い起こさせる。どうにも皮肉で、やっかいな状況だ。妻といつまでも距離を置くのは、そのせいもあるだろう。
 ゴーティスは、妻となったカサンドラには、何の情も持っていない。妻に対する思いやりや義務感で、ラニス公地での静養を決めたのではない。妻という立場の女が傍らにいる状況は息苦しく、いつまでも慣れはしない。けれども、表面的にでも、王妃を敬う姿勢を見せる必要がある。
 ラニス公地に行けば様々な思いが交錯するかもしれないが、王城の日常から解放され、思わぬ気分転換になるかもしれない。
 ゴーティスは、八方塞がりの現状を打破したかった。いつまでも過去に囚われている自分に、嫌気がさしていた。

  ◇  ◇

 ゴーティスの不安に反し、ラニス公地に踏み入っただけでは、ジェニーの面影が目に浮かぶきっかけにはならなかった。春を迎えた公地内は緑にあふれ、森や林の近くに湖や川が点在していて、散歩や狩りにこと欠かない。その環境にむしろ、ゴーティスは癒された。
 ゴーティスとカサンドラがラニス公居城に到着した初日、フィリップこと現ラニス公と彼の妻、弟ジェラール、彼らの母、幼い妹たちが勢ぞろいして二人を迎えた。一人一人がとても礼儀正しく二人に挨拶し、二度目の再会となった王妃カサンドラを賛美する。おとなしい彼女も、温和な彼らには笑って接していた。そのカサンドラの姿は再びジェニーを彷彿とさせ、ゴーティスは、彼女から目を背けることを余儀なくされる。
 歓迎の宴があった次の日の朝、ゴーティスたちは公地内の小城に向かった。新婚の夫妻がなるべく二人で過ごせるようにと、フィリップが独立した小城を用意していたのだ。フィリップの心憎い配慮といったところだろう。
 小城は、室内だけでなく庭園も整備され、何不自由のないように人員が配置されていた。南向きに建てられた城の室内は明るく、女性好みに可愛らしく改装されている。ゴーティスにとっては室内の装飾など取るに足らないことだったが、カサンドラの様子から、どうやら彼女はここが気に入ったらしいことが見てとれた。彼女の母国からついてきた侍女も、満足したようだ。
 午前中の日がよく入る一室で、カサンドラが侍女と話をしている間、ゴーティスは長椅子に座って窓の外を眺めていた。さっさと野駆けに出かけたかったが、妻が、いかにも退屈そうな茶会を開くとかで、彼の外出は止められていた。初日くらいは妃の希望につきあうようにと、ゴーティスはサンジェルマンから苦言を呈されたばかりだった。
 妻という存在は、なぜこんなに面倒なのだろう?
 そして今夜は、二人の寝室はまるで新婚初夜のようにあつらえられているのが、容易に想像できる。元々がそれを意図する小旅行であったから仕方がないが、全く気乗りのしないゴーティスは、幼い妻の全身を眺めながら、さらに小さくため息をつく。

 夕食は素晴らしく豪華で、美味な酒で満たされていた。地元の古酒はいい味だった。寝室に用意されていた寝酒も、甘く爽やかだった。
 味覚の満足感と慢性的な欲求不満から、その夜、ゴーティスは妻を抱いた。相手は誰でもよかった。前夜の宴に同席していたフィリップの妻が寄せる、なめるような視線や、王妃付きの衛兵がカサンドラに向ける熱い視線を、ゴーティスは頭にぼんやりと思い描いていた。
 ゴーティスの妻になるまでは生娘だったカサンドラは、女としての悦びにいまだ目覚めておらず、夫のなすがままに体を預けていた。彼女の両手は、しっかりと枕を握っている。ゴーティスの息づかいと寝具がこすれる音だけが、うつろに部屋に響いている。黄褐色の肌と時々不快そうに眉間に寄る皺、ぴったりと閉じられた彼女の瞳。ゴーティスは不意に苛立ちを感じ、体を起こした。
「……後ろを向け」
 突然のことに彼女は驚いたようだったが、彼の意向に逆らうはずもなく、素直にその言葉に従う。棒のように真っ直ぐに伸びた彼女の手足は、女性特有の丸みに欠けていて、長い髪がなければ少年のようだ。
(今から成長しようとする少女の体なのだ。仕方あるまい)
 ゴーティスは自分をひとり納得させ、彼女の足を開かせると、その上にゆっくりと体を重ねる。
 興ざめした自分の体を奮起させようと、ゴーティスは過去の愛人たちとの情事に思いをはせた。だが、愛人の存在を思いだせば当然、ジェニーの姿もよみがえる。彼女を思い出す時は毎回そうであるように、今度も愛憎の念をかきたてられる。ゴーティスの喉の奥がひきつった。
(喉が熱い、焼けそうだ……!)
 喉の底から、あの日の濁流が轟音とともにゴーティスを襲い、大波にのみ込まれそうになって、必死に逃げる。だが、逃げても逃げても、濁流は追いかけてくる。ジェニーは見えない。ケインも見えない。ゴーティスはたった独り、濁流に足をとられ、叫び声をあげることさえできずに、川底に引きずりこまれる。
 泥の味が口いっぱいに広がった。ゴーティスはもがきながら、何度も何度も水を吐き出すが、いくら吐き出しても、それは留まることをしらない。
 ジェニーの自分への裏切りや彼女と通じた弟ケインに対する憎悪の深さより、彼女を永遠に失ったことへの激情があまりにも大きかった。彼女を失うまで、ジェニーへの想いの大きさを自覚していなかった。
 後悔がほとばしって、ゴーティスは激痛にあえぐ。
 それでもジェニーからすれば、憎い仇の手にかかって死ぬよりも、あの自然の水の中で息絶えた方が数倍幸せだったに違いない。彼女は、愛する男と一緒だったのだ。
 ジェニーやケインの顔を思い出し、その場にいた自分の感情の起伏がよみがえってきた。恐怖、悲しみ、後悔の全てが一度に襲い掛かる。あまりに激しすぎて、ゴーティスは、それを受け切れない。
 ゴーティスは激情のおもむくままに感情の波にのまれ、妻の中で一気に果てた。

 次の日は早朝から激しい雨が降り続いていた。朝だというのに辺りは真っ暗で、この地域ではめずらしい強風が野山を吹きつけ、外出を企てていたゴーティスは出鼻をくじかれてしまった。
 朝食室に行くと、ひと足先に起きていたカサンドラが侍女に茶を入れてもらっていた。部屋の前にはいつものように彼女付きの衛兵が立っていたが、ゴーティスの姿をみとめ、これまたいつものようにさりげなく、彼の視界から外れていく。その若い衛兵は、王妃に淡い恋心を抱いている。
 部屋に入ってくる夫の姿をみとめると、カサンドラが笑顔になって嬉しそうに言った。
「まあ、王、もうお目覚めですか? まだお疲れでしょう? ゆっくりお休みになってらっしゃればよいのに」
 何度となく自分に向けられたことのある、妻の恋する瞳。
 ゴーティスはその視線が嫌いだ。愛情を捧げられるのは御免だった。純粋な恋心を差し出されるのは、ゴーティスには疎ましい。欲望に彩られた視線の方が、ずっとましだ。
 カサンドラは、昨夜のことを思いのほか喜んでいるようだった。王妃の役目は世継ぎを産むことで、それも無理はない。彼女がゴーティスに嫁いで以来、数えるほどにしか夫婦関係のない状況下では、彼女の喜びもひとしおだろう。
 その嬉々とした彼女の様子は傍目にも明らかで、勘のよい若い衛兵にも夫婦の間に起きた事情が伝わっているはずだ。衛兵は、部屋のすぐ外で室内の様子に聞き耳をたてているとみて間違いない。ゴーティスは意図的に、妻に優しい言葉をかけた。
「俺は平気だ。それより妃こそ、疲れておるのではないか? ここへは休養に来たのだ、ゆっくり休むがよいぞ」
 彼女はまた明るい顔で微笑んだ。それから、侍女に彼の分のお茶を用意するように指示する。
 ゴーティスが腰掛けた寝椅子の横に彼女を誘うと、彼女は恥ずかしそうな笑顔でやって来た。お茶を入れ終わった侍女は、気をきかせたのか、二人だけを部屋に残して退室した。
 その夜、ゴーティスはまったく気が進まなかったのにも関わらず、昨夜に引き続いて妻を抱いた。行為の最中はひと言も口をきかずに、ただの動物的本能のつき動かすままに。
 雨で屋内に閉じ込められ、鬱憤がたまっていたせいだ。


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