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8.遠のく瞳

2009.03.17  *Edit 

 白々と明けていく外の闇を窓越しに見つめ、ジェニーは、一時は落ち着いた鼓動が再びゆっくりと高まっていくのを感じていた。ジェニーはしばらく前に目覚めてから目が冴えて眠れずにいるが、隣に横たわるケインの胸は規則的に小さく上下している。ジェニーから顔をそむけるように横に向けられた彼の顔は安心しきっていて、彼が逃亡の夜からずっと眠れないでいたことを知るジェニーは、胸の内でほっと息をつく。

 昨日の夕方遅くにいきなり降られた雨のせいで、ジェニーとケインはずぶ濡れとなった。ケインがずっと焦っていたせいもあって、二人はそこまでの道中をほとんど休まずに歩いていたのだが、二人を容赦なく濡らした雨は、歩きどおしで体中にくすぶっていた疲労をあからさまに重くした。
 ジェニーが森の入口にあったこの廃墟を偶然に見つけたときは、ケインですら一直線にそこに向かい、扉を破り、何の迷いもせず雨宿りすることを選んだ。道を越えてずっと向こうにはひしゃげた家が数軒並んでいたが、周辺にひと気はなく、ジェニーたちを脅かすような存在は見当たらなかった。ジェニーは、雨が止むまでの一時でも、屋根のある場所で体を休められることがとてもありがたかった。
 すぐにあがると思っていた雨は霧雨に変わり、小屋の中の気温も下がっていた。深い夜がゆっくりと近づいていた。
 ジェニーは体がだるかった。足腰が重い。おまけに、野いちごにありつけた早朝からろくに食べ物を口にしていないので、ひどく空腹だ。空腹過ぎて、お腹の音さえももう鳴りはしない。
 ジェニーは空腹を忘れようとベルアン・ビルに着いた後のことを考えたが、何も思いつかなかった。ケインも、元は椅子だった木の板に座り、何かを考えているように無言だ。
「ケイン」
 ケインが顔を上げた。彼が後宮のジェニーの部屋に来たときからそうだったが、表情に余裕がなく、全身に緊張感をみなぎらせている。
「なに?」
「今夜はここに泊まらない?」
 ケインがすっと口を閉じた。彼が一刻も早くヴィレールから出たがっているのは痛いほどわかっていたが、ジェニーは彼の体にも相当の負荷がかかっていると知っている。
 彼は地下牢を脱出する際、なぜか戻ってきた看守と鉢合わせ、突発的に刺してしまったそうだ。ジェニーと会ったときの彼は、血のついた短剣をまだ手にしていた。人を殺(あや)めてしまった可能性に怯え、想定外の事件によって逃亡の発覚を早めてしまう可能性を恐れ、ケインは極度の興奮状態に陥っていた。それから、二人は一言も言葉を交わさずに地下扉をくぐったのだ。
「でも、まだ国境まではずいぶん距離がある。国境に面するラニス公の領地にも入っていないし、もっと遠くに行かないと」ケインは小屋の扉に目をやり、硬い表情で首を横に振る。「この国から早く出たい」
 彼は追っ手に捕まるのを非常に恐れていた。ジェニーは彼の罪状を尋ねたことはなかったが、彼は重い罪で投獄されたようで、彼が行方を追われるのは避けられないことらしい。もちろん、逃亡した罪人が捕まれば命がないことくらい、ジェニーだってよくわかっている。
「そうだけど、あなたも私もすごく疲れてるわ。ここで少し休んでいった方がいいと思う。それに、この霧雨の中を移動するのはあまりいい考えとは思えないわ」
 ケインはジェニーをじっと見た後、小屋に一つしかない小さな窓の方を見た。窓を通して見える世界はもう真っ暗だ。雨は砂が舞うようなさらさらとした音をたて、屋根に降りそそいでいる。ケインが疲れた顔をしてため息をついた。
「わかった。いいよ、そうしよう。きみの顔色も悪いから心配だ。ここで少し休んで、明日以降に備えよう」
 それから、二人は協力して、昔は寝台だった場所を、せめて一夜だけでも居心地よく過ごせるようにきれいに整えた。

 ジェニーと組んだ手をあげ、隣に寝ているケインが小声で呼んだ。「ねえ、ジェニー」
「うん?」
 ジェニーが顔を傾けると、ケインはあおむけにしていた体を横向きに変えながら、言った。
「一緒に逃げたこと……後悔してない?」
 その瞬間、ジェニーの脳裏に、屋上でのゴーティス王の笑みがよみがえった。ジェニーを眩しそうに見て、悪意のない笑顔を向け、誓うようにジェニーの耳元で囁いた彼の声を思い出した。彼が間近にたたずんでいるように思え、ジェニーの体の芯が震えた。
 あのときは、普段の王とは似ても似つかない、と感じたものだが、今思い返してみると、彼のそういった兆候はそれ以前にところどころで目にしていた。
 もしかしたら、彼の放った言葉の数々は、全て本心だったのかもしれない。
「ジェニー?」
 ケインの声に不安がこもり、ジェニーは彼と組んだ手に力をこめた。
「ううん。追っ手が怖い、とは思っているけど……後悔はしてない」
 ケインが手を握り返し、ジェニーを見てほっとしたように頬をゆるめる。「それならよかった」
 王城の地下水路をたどる間、ジェニーは脱出の成功を願う一方で、自分たちが成功を目前にして捕らえられる光景を、なぜかずっと想像していた。現実に脱出を決行していながら、ジェニーは王城の外に出られる瞬間を予想できなかった。だからなのか、衛兵の目をすり抜けて城壁の外についに出られたとき、脱出を成功できた喜びと同時に、奇妙な喪失感で胸がいっぱいになった。でも、城から一刻も早く離れなければならなかったジェニーに、その不思議な感情の理由を考え、感傷に浸っている時間は、当然ながら一秒もなかった。
 ――もう、王城には戻らないのだから。
 手を組んだのとは逆の手をのばし、ケインがジェニーの額に触れる。ジェニーがケインを見上げると、彼はジェニーに顔を寄せようとして、途中で顔をくもらせた。
「このままじゃ、そのうちに追いつかれる。ジェニー、どこかで馬を調達しよう」
 ジェニーは、ヴィスコンデールの街に入る前に、農家の裏庭に干してあった洗濯ものから男女の服を拝借したときのことを思い出した。二人が風にはためく服を取り去るのを幼い子どもに見られたが、その子は二人に怯えきっていて、泣き声すらあげなかった。
「もちろん、その方が絶対にいいと思うけど――」
 ジェニーが、ケインの背中にある火傷の痕を目にしたのもそのときだ。肩甲骨の上に残るその痕は、罪人の証でもある焼き印だった。彼が罪人という事実をあらためてつきつけられ、衝撃的だった。
「でも、服のときのようにはいかないわ」
 ジェニーが自分の服に触れて言うと、ケインから小さな笑いがもれた。
「うん。たぶん、あんなに簡単にはいかないね。……ちょっとの間、拝借させてほしいだけなんだけどな」
 ジェニーが目を上げると、ケインが普段の和やかな笑みを復活させていた。それにつられてジェニーは笑い、そして、ほっとする。
 ケインがジェニーの唇の脇に口をつけた。それは横にすべるようにしてジェニーの唇につけられ、ジェニーは彼の唇を黙って受ける。それは温かく湿って柔らかだったが、ジェニーが前に触れたときと、どこか感触がちがった。なんとなく、落ち着かない。
 ケインが口を離してため息をもらし、再び、ジェニーの呼吸を奪う。唇をふさがれたとき、ジェニーは細く開いた唇の表面に彼の舌を感じて、自分でもびっくりするぐらいに戸惑った。強烈な違和感だった。ジェニーは思わず、目を開けた。
 ジェニーが握っていたケインの手を押し戻そうとすると、ケインがはっとしたように顔を離した。「ごめん」
 彼が気分を害すと思っていたジェニーの予想に反し、ケインは照れたように笑い、ジェニーの顔を手のひらで包んだ。
「顔を見ていたら、つい触りたくなって……。ごめん、今日はゆっくり休まないとね」
 ケインは名残惜しそうにジェニーの唇を見つめたままだったが、ジェニーを覆っていた彼の体を離した。
「できれば明日にでも馬を手に入れて、国を早く出よう。きみの叔母がいるベルアン・ビルになるべく早く着きたい」
 王城からの脱出に成功した後、ジェニーは何度かケインに彼の親類の当てを尋ねたが、彼が頼っていけるような親類はいないようだった。ケインの言動からジェニーは彼が貴族だろうとは考えていたが、話が家族に及んだとたんに彼は言い渋る。両親は既に他界し、三人の姉は遠方に嫁いでいて、すぐ上の兄とは昔から仲違いをしているということ以外、身の上を明かしてはくれない。
「きみの叔母さんは私を歓迎してくれるかな?」
「きっと大歓迎よ。あなたもきっと、彼女を大好きになると思うわ」
 ケインが嬉しそうに笑って、寝台の上にひっくり返った。お腹の上で両手を組んで目を閉じるが、微笑は絶やさない。その姿は、すっかり元通りの彼だ。
 彼を眺めているだけでほほえましい気分になり、ジェニーも彼にならって目を閉じた。眠さはあまり感じなかったが、体が疲労している感覚が戻ってくる。
「――ねえ、ジェニー、お腹が痛いの?」
「え?」
 心配そうな声が隣で響き、ジェニーは目を開けた。ジェニーがケインに顔を向ける前に、彼の手が躊躇いもなく、ジェニーのお腹の上に置かれた。彼の手は繊細で、ジェニーの肌より冷たい。
 彼の細い手の指がそこに見えると、ジェニーは、そわそわと落ち着かない気分にさせられた。生理的に嫌だというのではない。彼に触られることが、どういうわけか、しっくりこないだけだ。
「どうもしないわ。どうして?」
 ジェニーがさりげなく体の位置を動かすと、ケインもさりげなく手を引っ込めた。
「何でもないならいいんだ。きみがお腹を時々さわっているのを見かけたから、ちょっと気になっただけ」
 ジェニーには今のところ、アリエルや女官長に散々脅されてきたような体調の悪化はまったくない。逆に、自分の体力が増強されているような気さえする。ジェニーがお腹に手を触れると、手と接した面から活力をもらえるような不思議な感覚がある。だが、ケインの手がそこに繋がれるのは何かがちがった。その手はここに所属しないという異質さで、下腹に勝手に力が入る。
「痛くないけど……でも、お腹はすごく空いてる」
 ケインに感じた異質さを頭から消そうとして言ったジェニーの言葉は、ケインを和ませたようだ。彼は、次の町にたどりつく前に食物を絶対に探し出す、とジェニーに約束した。

 体の疲れに身を任せ、眠気に脳が降伏するまでの間に、ジェニーはこの二日間で考えもしなかった王城のことを急に思い出した。あの窮屈な生活に戻りたいとは思えなかったが、ジェニーが好んだ日常も一部にはあった。完全に心を許してなどいないが、サンジェルマンは誠実な人間で、アリエルは親切で理解のある人物だった。あの二人の仲がどう発展するかも、見届けたかった。
 朝がまた始まれば、ジェニーとケインはここから移動しなくてはならない。
 ――あの王は、私を捜して追ってくる……?
 ジェニーには、ゴーティス王が彼女の逃亡を知って怒り狂う様も想像できたが、彼がジェニーに愛想をつかし、捨て置く様も想像できた。そしてそのどちらを想像しても、胸のずっと奥のどこかで、小さな傷が疼くような不快な痛みを感じる。ジェニーがケインと地下階段を駆け降りていた頃から、胸の中では小さく鋭い声があえぎ続けているが、それがケインを求めているのか、ゴーティス王なのか、誰なのか、何なのか、ジェニーには今もわからない。
 ただ、もしゴーティス王の追っ手がやって来たら自分の命はない、とジェニーは思っていた。彼は、彼の保護の下から逃れたジェニーを、決して許しはしない。
 ただ生き延びるために、ジェニーは逃げ続けなければならないのだ。

  ◇  ◇

 サンジェルマンと部下は街道を夜通し進み、国境の手前で馬を換え、ラニス公の領地にようやくたどり着いた。ラニス公の領地は東西に細長く、国境と接する北部には低い山が連なる。人目を忍んで国境を越えるには山道を行く方が無難だが、それがひとり旅だった場合、山賊や予期せぬ危険を回避するためにも、ふもとを抜ける遠回りの道をたどっていった方が断然いい。
 山に続く右手の道の先を眺めながら左手の道をとり、まもなく見えてくるだろう小さな宿場町を目指して、二人はその後も無言で馬を走らせた。後ろからは明るい朝の光が二人を追いかけ、二人は進行方向に細く伸びる自分たちの影を追いかける。 
 サンジェルマンは、王城からの逃亡を果たしたとはいえ、ジェニーが今もなおヴィレール内に潜んでいる、とふんでいた。若い女が旅をするには常に周囲から身を守って進まなければならず、馬もない彼女の場合、体力的にも一日で移動できる距離は限られるはずだ。それに、彼女はあまり自覚していないようだが、お腹に子どもがいるのだ。体力は相当に奪われ、歩みも遅くなっているだろう。
 まっすぐに西に伸びる一本道の先に家がいくつか見えてきて、サンジェルマンたちは馬の速度を落とした。夜が明けたばかりの家並みに、腰の曲がった老婆がひとり歩いていた。一軒の家の裏に、白っぽい鶏が数羽放たれている。そののどかな風景を通りすぎてなおも直進すれば、数軒の宿や店が連なる界隈が見えてくる。
 遠くなるにつれて裾が広がるように、通りの両側に町ができていた。サンジェルマンは自分たちの乗る馬のひづめの音だけを耳にし、その小さな町を見渡した。まだ朝早いせいか、サンジェルマンたちの進む道の先に、人影は見えない。

 町の中央に来て共同の水飲み場に行き当たり、サンジェルマンは馬に水を与えていた。街はまだ完全に目覚めておらず、水のはねる音以外に音はなく、ひっそりとしている。
 そのとき、まだ馬上にいた部下が、殺気だった声で彼を呼んだ。
「サンジェルマン様!」
 振り向くと、彼が看板の出ている宿屋の方を指差して言った。「あの裏に若い女が!」
「何だって?」
 サンジェルマンは彼が指差す先に目を向け、宿屋と隣の店の隙間から見える、裏通りを見た。
 誰も、何も見えない。
「たしかに今、娘が走ったんですよ!」部下は焦ったようにサンジェルマンに言う。
 宿屋にいる、ただの下働きの女なのかもしれない。
 そうは思ったが、何か虫が知らせ、サンジェルマンは全ての可能性を追おう、とそのときに決めた。
「確かめよう」
 手綱を操り、サンジェルマンは急いで馬に乗る。それから、部下が女を目撃したという裏通りを目指し、宿屋の角を曲がり、馬が通れるだけの脇道に入った。辺りは静かで、二人の起こす音は間違いなく住民の迷惑だ。
 しかし、二人が馬で乗り入れた雑然とした裏通りにはひと気がなく、風が吹き抜けているだけだった。通りの左右を先の先まで見渡しても、住民が扉を開ける気配すら感じられない。
「無駄足、か……」
 サンジェルマンは、困惑したように辺りをきょろきょろと見回す部下を見た。彼の見間違いとも思えないので、たぶん、ここにいたという女は、宿屋か付近の店で働く地元の娘なのだろう。そんなに簡単に、広大な国土の中でたった一人の娘を見つけ出せるわけもないのだ。
 こんな思いを何度味わうはめになるのか、とサンジェルマンが今後の捜索を憂い、部下から目をそらして、山のある方角に目をむけたときだ。立ち並ぶ家々の裏、そのずっと奥に、茶色の物体がさっと動くのが見えた。それはほんの一瞬のことだったが、その直後、馬のいななきが空気をきって小さく聞こえてきた。部下が息を飲んで振り返るのと、サンジェルマンが言葉を発したのは同時だった。
「行くぞ!」
 何か、勘のようなものだった。

 二人のいる通りから馬のいななきが聞こえてきた方角に行く道は、なかなか見つからなかった。どれも細すぎて馬では通れない。胸騒ぎとともに焦りが高まって、サンジェルマンの全身に熱い血が駆け巡る。
 やっとのことで通れる道を見つけてサンジェルマンがその角を曲がると、その先に川の水面が見えてきた。橋は、かかっていない。
 川の手前で視界が開け、サンジェルマンの馬が川岸の急な傾斜に躊躇して立ち止まった。川幅はそれほどないが、水深がありそうだ。サンジェルマンは体勢をくずさないように馬を何とか操りながら、川の対岸を走る二頭の茶色い馬と、馬上にいる人物に気づく。山に続く道を、馬を急がせて駆けていく。
 一人は赤茶色の服を着た村娘のような若い女で、もう一人は金髪の痩せた若い男だった。女の乗った馬はすぐに向きを変えてしまったためにその顔が確認できなかったが、男の方は、対岸にいるサンジェルマンにずっと前から気づいていたとでもいうように、彼に顔をゆっくりと向けた。
 声が――驚きのあまり、声が出なかった。
 馬を落ち着かせようとしていた手綱の手をいきなり止めたので、サンジェルマンはあやうく落馬しそうになり、あわてて手綱を引いた。隣に追いついた彼の部下も、急に止まった馬の上で姿勢をただそうとしている。
「あれは……?」
 部下の放った声で我に返り、サンジェルマンは視界の先に小さくなっていく二人の後ろ姿を絶望的に見つめた。
「サンジェルマン様?」
 サンジェルマンは部下を見つめ――見つめ過ぎて、部下が不審に思ったのだろう、彼が眉をひそめるのを目にして、ようやく口をきけるようになった。
「あれは……ジェニーだ」
「ええっ!?」
 女の顔は確認しなかったが、サンジェルマンにはそうとしか考えられなかった。
 部下が二人の姿を目で追い、サンジェルマンも、山の緑に消えていく小さな黒い二つの影を見た。男の挑戦的な顔を目にしてもなお、サンジェルマンには、今見たことが現実だとは信じられない。
「では、すぐにでも追いませんと!」
「……ああ」
 サンジェルマンは川に架かる橋を探して視線をさまよわせたが、動く気になれなかった。数年前を最後に顔を見ていなかったが、頬の肉がこけて体がひとまわり小さくなっていても、馬上の彼がケインであることはすぐにわかった。
 王命で地下牢にずっと閉じ込められていた、五十二号。
 幼い頃から体が弱く、母親の愛を独り占めにし、屈託のない態度で皆から好かれていた、王の実弟。牢内で早々に亡くなるだろうという予想を裏切り、彼が数年をそこで生き続けているのはサンジェルマンも知っていた。
 ジェニーと一緒とは――。
 皮肉な巡りあわせに、サンジェルマンは心の底から恐ろしくなった。久しぶりの恐怖を感じた。
 王は、他の誰よりもケインに敵意を覚えるはずだった。二人が一緒にいることは、おそらくまだ誰も知らない。王にこの事実が知られる前に、ケインを確実に仕留め、ジェニーと引き離さなければならない。
「あちらに橋があります! 行きましょう!」
 サンジェルマンは部下の示す小さな橋を見た。馬首をそちらに向け、部下の後に続く。


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