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トワイライト・ノベル

 【 2009 年 02 月】 更新履歴

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2009.02.28【 6.短剣の持ち主

 「若い女……ですか」 彼の返答を聞いてベアールは眉をひそめ、心当たりを探そうとでもするように、目玉をぐるりとまわした。やがて、彼はやるせなさそうに深いため息をつく。どうやら、思い当たる節はないらしい。サンジェルマンは静かに彼に歩み寄り、行く手を阻むように彼の前に立った。「それで――ベアール殿、その貴公の長兄とやらは今どこにおられる? 私はおそらく、面識がないと思うのだが?」 サンジェルマンが問うとベア...全文を読む


2009.02.28【 6.短剣の持ち主

  ランス公が執務室に消えていって間もなく、サンジェルマンは衛兵から、部下が面会したがっていると知らせを受けて部屋を後にした。部下は一階の衛兵待機室にいるという。階上まで上がることが許可されない階級に属する、彼の部下だ。 雑然とする衛兵待機室に足を踏み入れるなり、サンジェルマンは待ち人の顔を認識して息を飲んだ。その部下を任務地に派遣して二ヶ月も経っていない、予想外に早い帰還だ。 日の光がわずかにしか...全文を読む


2009.02.28【 6.短剣の持ち主

  ライアンとの約束時間まではまだ間があったが、サンジェルマンは本館を通って彼と落ち合う場所に向かっていた。 今日は、ライアンとは旧知の仲であるユーゴ・ベアールが来城する日だ。 ベアールと彼が会えるようにとライアンが事前にとり計らってくれたため、今日、二人は初めて会話らしい会話を交わすことになる。 腰に差したジェニーの短剣の鞘に触れると、サンジェルマンは、王が彼女の人工的な流産を示唆された際に見せた...全文を読む


2009.02.28【 5.王の子

  ジェニーが自身の妊娠を知って一日経ち、王は訪問を約束していた夜になっても、ジェニーの前に現れなかった。急用ができたのだという。 王の存在に邪魔されないおかげで、ジェニーはケインとの前夜の約束を事実として徐々に実感できるようになり、彼との再会と思わぬ脱出計画がジェニーの心の負担をずいぶんと軽くはしてくれた。でもその一方で、王に手を下すことなく志半ばで去ってしまうことへの迷いや、説明のつかない、去り...全文を読む


2009.02.26【 5.王の子

  隣国からの使者を無事に送り出した次の日、朝早いうちから青空は広がり、すがすがしい空気が王城を包んでいるというのに、サンジェルマンの心はどうにも晴れなかった。昨日の夕方に知ったばかりの知らせは彼の気を散らせ、昨夜の眠りまで浅くした。 王の執務室に続く廊下で、サンジェルマンはその予期せぬ報告をした張本人である女官長と合流すると、まずは隣にいた侍従長に黙礼し、続いて彼女に挨拶した。侍従長の緊張した表情...全文を読む


2009.02.25【 5.王の子

  口をつけもしなかった夕食後にやってきた女官長を追いやり、心配そうに付き添うアリエルを無理に室外へ追い出し、看護の召使さえも拒否して室内に独りでいることを勝ち得た後、どれくらいの時間が既に経ったのか、暗闇をいくら見つめてもジェニーにはわからない。 ジェニーは悩み考えることに疲れきって、寝台からふらふらと這い出した。外から物音も声も聞こえてはこなかったが、隣の部屋ではアリエルか召使が控えているだろう...全文を読む


2009.02.25【 5.王の子

  しばらくぶりに見た、鮮やかで、生々しい夢。 ケインは叫びながら飛び起き、薄暗い空間の中で必死に両手を動かして、自分の唇を拭った。血の味が、消えてくれない。それはまるでついさっき身にふりかかった出来事のようで、ケインの息が乱れ、呼吸が浅くなっている。彼は体中を手で触り、体の各部位があるべき箇所にまだついていることを確認して、ようやくほっと息をついた。「夢、か。本当に、夢……」 空腹感はそれほどひどく...全文を読む


2009.02.25【 5.王の子

  部屋に漂う濃厚なベリーの香りにめまいを覚え、ジェニーがアリエルに吐き気をうったえたところ、彼女が大まじめな顔をして侍医を連れて来たのにはジェニーも驚いた。侍医に遅れること少し、女官長までもがジェニーの部屋に急いで駆けつけてきて、アリエルの横で侍医の診療をはらはらとしたように見守っている。ジェニーは、自分の体調にわずかでも変化があると繰り広げられるこの種の展開に慣れつつはあったが、彼らの大げさな対...全文を読む


2009.02.24【 5.王の子

  少し前、ジェニーが風邪で食が細くなったとゴーティスも聞いていたが、そのせいか、彼女の頬の肉がわずかに落ちたようにも見える。ゴーティスに名を呼ばれると彼女は顔を上げ、彼女に一歩近づいた彼の顔を、今になってやっと彼の存在に気づいたとでもいうように見返した。サロン内にもれる陽の光が彼女の顔右半分を照らし、瞳が琥珀色に透き通って見える。 彼女の肌や唇の色を注意深く見てみるが、それほど体調が悪そうでもない...全文を読む


2009.02.24【 5.王の子

  ある日の朝、王の執務室へ向かう前のひと時にサンジェルマンが女官長の部屋で彼女と話をしていると、二人がいる部屋の扉をたたく者があった。皆が忙しくしているこの時間帯に、女官長が誰かの訪問を受けることはほとんどない。彼が女官長をみると、彼女は、わからない、というふうに肩を小さくすくめてみせた。「どなた?」 女官長がサンジェルマンの顔を見ながら部屋の外に声をかけると、彼も知る女の低い声が返ってきた。「ア...全文を読む


2009.02.23【 5.王の子

  誰かが扉の外で話をしているらしく、サンジェルマンは現実と夢の世界を行きつ戻りつしていた瞼をあげて、細く開かれた扉の隙間から覗く廊下を見やった。彼は召使部屋に居て、彼同様に解毒処理を受けた数人もその疲れきった体を簡素な寝台の上に横たえている。彼の斜め向かいにある寝台にはライアンが場所をとっていたはずだったが、いつのまにか、ライアンの姿は既に消えている――。 狩りから戻って以来、何度も繰り返し見た夢か...全文を読む


2009.02.23【 4.復讐のとき

  ゴーティスの体は毛布の中で温かく保たれていて、久しぶりに熟睡をしたような妙な爽快感があった。青白い光が窓から室内に細く差し込み、別の方角には黄色い灯火らしき光が見える。今がはたして夜明けなのか、日暮れなのか、目覚めたばかりのゴーティスには判断がつかない。 おもむろに頭を上げようとして、ゴーティスは、予想外に自分の頭が重いことに気づいた。「なに……?」 毛布から手を出し、ゴ-ティスは後頭部に手をそっ...全文を読む


2009.02.22【 4.復讐のとき

  ゴーティスは朦朧とする意識の中で、銀色の剣のきらめきに目を奪われ、それが空気を切る音を聞いた。ついに人生が終わるのか、と、彼はきらめく光の眩しさに両目を細める。 うすれゆく視界の中で、ゴーティスは、細く流れていく赤い血と、ジェニーが両手で顔を覆って泣き崩れる姿を目にした。 やっと念願の目的を成し遂げたというのに、彼女の泣き声はとても悲痛だ。その声はゴーティスの胸ぐらを掴み、彼の心ごと激しく揺さぶ...全文を読む


2009.02.21【 4.復讐のとき

  ジェニーの膝からゴーティス王の手が滑り落ちた。ジェニーは思わず椅子から飛び起き、彼の前から慌てて移動して、椅子の背後にまわる。 王の広い背中が大きく揺れていた。激しい彼の息づかいが、彼女の耳にもはっきりと届く。「お……これは、どうし……?」 顔をあげたゴーティス王の額には汗で濡れた前髪が貼り付いていた。顔色が青白く、唇が土色だ。何とかジェニーの方に顔をあげた王を、ジェニーは茫然として見つめる。 彼女...全文を読む


2009.02.21【 4.復讐のとき

  階段を上がっていく王を見送り、サンジェルマンは大広間には戻らずに館の外へ出た。日は弱くなり始めていたが、まだ外は明るい。サンジェルマンは館の周囲に異状がないかと目を配りながら、館の周りをゆっくりと歩いていった。外で護衛を担当する近衛兵たちが彼に気づき、次々に敬礼する。 近衛兵は二人で一組となって場を担当する決まりになっているが、サンジェルマンは庭を一人で歩いている近衛兵を見つけた。その若い近衛兵...全文を読む


2009.02.20【 4.復讐のとき

  狩りの一行は、まだ日が高いうちに館に帰ってきた。大猟とまでは言えないが、小鹿とキジを狩れたことで、王を含む四人は揃って上機嫌なようだ。王の後続にいるリヨン公が、隣の近衛隊隊長に大声で陽気に話しかけている。普段は人の会話に入りたがらず、気に障る、と言って王はむしろ人々と距離をつけたがるが、今日の王はリヨン公に何かを問われると、めずらしく嫌な顔をせずに何度か返答していた。 館の玄関前には、帰宅した一...全文を読む


2009.02.19【 4.復讐のとき

  数日後の夕方、ジェニーは涼やかな風の入るサロンにいた。彼女は最近になってようやく充分な睡眠がとれるようになり、体調もほぼ元通りになってきている。その日は朝から爽やかな陽気が続き、彼女は久しぶりに外気に直接触れられる機会を得ていた。 ジェニーがぼんやりと考え事をしながら空を見上げていると、アリエルの声が彼女の思考を遮った。「ジェニー様、そろそろお部屋に戻りませんと」 ジェニーが日光にさらされていた...全文を読む


2009.02.19【 4.復讐のとき

  サンジェルマンが事件の真相について報告をした時、女官長はあまりの衝撃で言葉を一瞬失った。彼がニーナと対面した直後のことだ。 女たちの大小様々な醜聞は昔から耳に入ってきたものだが、暗殺者たちを自ら王城内に引き入れて事に及ぶという大胆な手口に、女官長は、ニーナへの怒りを通り越して恐怖さえ感じる、と口にした。女官長の判断に基づき、ニーナが事件の首謀者だという事実は一部の者を除いて伏せられ、彼女は襲撃の...全文を読む


2009.02.18【 3.もつれる感情

  囚人たちを収監する牢が並ぶ一角、サンジェルマンはある小部屋の扉の前に立ち止まり、いやでも高まってくる心臓の高鳴りを何とか整えようとしていた。扉の前には見張りの衛兵が無表情で立っていて、サンジェルマンが入室の指示を出す“時”を待っている。彼が対決しようとする人物の頭が、扉についた覗き窓から見え隠れする。 彼が瞬きをした瞬間、地面に倒されたジェニーが陵辱される寸前だった光景が目に浮かんだ。それだけでも...全文を読む


2009.02.18【 3.もつれる感情

  アニーが垣根の中に沈んでいっても、ジェニーは、何もできなかった。「心配するな、死んじゃいないさ」 耳元に息を吹きかけるようにして男は囁き、ジェニーがくやし涙の浮かんだ瞳を向けると、男は静かに笑った。彼女の口は、背後から絡まる男の腕でしっかりと塞がれていた。 灰色の目の男が彼女の腰に手を巻きつけ、庭園の奥へと無理やりに連れていく。男の仲間は周囲を気にしながら先に立って足早に歩き、押し殺した声で彼ら...全文を読む


2009.02.17【 3.もつれる感情

  月が変わり、日差しが鋭く変わりつつあった。去年とは違い、暖かくなっても王が戦に繰り出さないせいもあって、城も国も平安を保っている。穏やかな日々が続いていた。 後宮内も平和だったが、その中で唯一、手がつけられないほどに動揺し激怒している女がいた。一時的にはその座を奪われても、結局は後宮に君臨すると自他共に認める、王の愛人の一人、ニーナだ。ここ数日、彼女の周辺だけは嵐のような日々に見舞われていた。「...全文を読む


2009.02.17【 3.もつれる感情

  冬の雪が雨に成り変り、地面を温かく濡らす。あじけない砂色の土が生気のある彩りに移っていく、次の季節。 雨が降ったり止んだりの日々がしばらく続き、ようやく水色の空が広がった日の午後、二人の女が衛兵二人に付き添われ、後宮のサロンから中庭に降り立った。中庭も春の装いに整備されている途中だったが、女たちの目的地はそこではない。四人は中庭の小径を抜け、東館の端にある扉に消えていく。彼女たちは、テュデル離宮...全文を読む


2009.02.16【 3.もつれる感情

  所用で地方に外出していたサンジェルマンが二週間ぶりに王城に戻ると、彼が旅の疲れを癒そうとする間もなく、彼の帰りを伝え聞いた侍従長、衛兵隊長、女官長たちから相次いで呼び出しがかかった。城内に働く使用人たちの表情が固く緊張しているのを目にした時から、彼の留守中に城内で何らかの異変があったのだろうと察してはいたが、彼が挨拶に出向く前から呼び出されたとなれば、それ相当の好ましくない事情があるということだ...全文を読む


2009.02.16【 3.もつれる感情

  そんな息詰まるような毎日で、彼女はニーナが離宮で催すという、いかにも退屈そうではあるが外出のできる茶会の誘いに飛びついた。ジェニーに声をかけたニーナの侍女ブランは、後宮の外で行う茶会について王の許可を“特別に”賜ったと、「特別」という部分をやたらに強調したが、ジェニーには、彼女がそれによって何を伝えようとしているのか、全然理解できなかった。 ニーナが開いた茶会から数日後、夜になって、ゴーティス王が...全文を読む


2009.02.15【 3.もつれる感情

  ジェニーとケインが出会った日から五日間、冬の小休止に入ったかのように雪が止み、天空から薄日の差し込む爽やかな日が続いていた。冬場に雲の合間から覗く太陽は、それがほんの一時であっても、人々の気分をぐっと高揚させてくれる。空気はきりりと冷たいがどこまでも清らかに澄み、屋内に閉じこもりとなっていた人々が外へ顔を出して、弱々しい光が透ける空を眩しそうに見上げる姿があちこちで見られた。 少し前まで、しばら...全文を読む


2009.02.15【 3.もつれる感情

  床の黒い扉は彼女が想像していたよりも重量がなかった。四角い扉を開けてみると、生温かく、湿った空気が彼女の顔の脇を吹きぬけていく。扉の直下には、床と同じ灰色の石でできた狭い階段が地下へと伸びていた。まだ新しい木くずが階段上に点々と散らばっており、黄色い埃をかぶった石階段の蹴上がり部分には人の足型がくっきりと残されている。扉のすぐ下の数段につけられた足跡はいくつもあって、違う方向にばらばらに向けられ...全文を読む


2009.02.15【 3.もつれる感情

  暗闇で暮らし続けて二年、男は自分の五感が以前よりずっと鋭くなっているのを実感していた。耳に入る小さな物音、かすかな臭いを敏感に感知し、視線はほんのちょっとの動きに反応して動く。だから彼は、衛兵が、彼の幽閉される牢よりもずっと階上にある木の扉を手で押す音でさえも、気づくようになっている。衛兵が三度も方向を変えて長い階段を降り、彼のいる牢に通じる通路の扉を開ける軌跡を、彼の耳はずっとたどることだって...全文を読む


2009.02.13【 2.疑念

  アニーの感情的な爆発のきっかけとなった黒土器の皿を召使に持ってこさせた女官長は、そこに書かれている文字が何なのか判別できず、お手上げとなって両手を広げた。彼女が今までに見かけたことすらない言語。庶民出であるジェニーが、字の読み書きができる事実にも驚いた。 ――それにしても、あの風変わりな娘には手を焼かされる。 女官長は重いため息をついた。 入城してから二ヶ月経つというのに、彼女は表面上こそ後宮の掟...全文を読む


2009.02.13【 2.疑念

  三日間にわたった謁見会のあくる日、普段より遅い朝食をとった後に移動した執務室。毎朝そこで、ゴーティスはその日の予定と城内の報告を受けることになっている。両辺が大人三人の両手を広げた長さぐらいしかない狭い執務室の続き部屋に、ゴーティス王に加え、長官、女官長、サンジェルマンが入ったために、部屋は実際の広さ以上に窮屈に感じられていた。「――怪我だと?」 女官長からジェニーが手足を負傷した件を知らされた彼...全文を読む


2009.02.13【 2.疑念

  謁見会は大きな問題も混乱も起きず、三日間がつつがなく過ぎた。全工程を無事に送った側近や侍女、衛兵たちは緊張の糸が切れてほっとしていた。 各領地は今回訪問を果たした総督たちの新しい統治下で徐々に復興の兆しを見せ、共通貨幣の導入にもそれほど大きな混乱はなく、新しい国土一帯に浸透してきているということだった。 現在の統治に代わった当時にはある地区で住民たちによる小規模の反乱が勃発したが、規模の大小に関...全文を読む


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プロフィール

蒼井りゅう

Author:蒼井りゅう
気の向くままに、主に恋愛小説を書いています。
毎日の音楽、気ままな旅、気のおけない友人たちとの楽しいひととき、美味しいゴハンが創作活動のもと!

好きな作家:山田詠美、群ようこ、星新一、ジョアン・フルーク、ロバート・パーカー、ジェフリー・アーチャー、ジェイン・オースティン、オスカー・ワイルド

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